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母集団形成の方法9選|目的やポイントまで徹底解説
企業にとって、自社に対する応募者の集まり(母集団)を作ることは、応募・採用に至る人材の数を確保する上でも大切な要素です。母集団を形成する方法は、求人サイトやハローワークを利用するほか、企業認知を高められるSNSを活用した方法などがあります。
当記事では、母集団形成に効果的な方法を9つ紹介します。アプローチ方法によっては採用コストや効果が異なるため、メリット・デメリットを鑑みた上で母集団形成の導入を検討しましょう。自社の採用活動に母集団形成を取り入れるか悩んでいる人は、ぜひご一読ください。
1.母集団形成とは?
採用活動における母集団形成とは「自社に応募する応募者の集まり(母集団)を作ること」です。
採用活動の母集団には、実際に自社に応募する応募者のほかに、すぐ応募はしないものの今後応募する可能性がある人物も含まれます。応募も1つのステップと捉えて、応募に至る前の潜在的な人材群を作り上げることが、母集団形成のポイントです。
採用活動では筆記試験・書類審査・面接といった選考活動を行って、応募者の見極めをします。選考が進むにつれて見極めも進み、全体の人数が少なくなるため、母集団形成で応募者の人数をしっかりと確保することが重要です。
近年は生産年齢人口の減少により、慢性的な人手不足が問題となっています。母集団形成は自社への応募・採用に至る人材の数を確保できるため、内定者の人数が予定より少なくなる問題を防ぐことが可能です。
また、応募者を集める際は、応募者一人ひとりの質を高い状態にしなければなりません。人数だけを確保しても、自社の仕事内容や社風に合わない人材ばかりでは採用のミスマッチが増えます。
母集団を形成することにより、自社が求める人材の方向性を意識した応募者を集めるため、採用のミスマッチを防ぎやすくなります。
2.母集団形成を行う目的
母集団形成を行うと、採用時にさまざまなメリットが得られます。自社の採用活動に母集団形成が必要かどうか悩んでいる採用担当者は、母集団形成が必要な理由を把握しましょう。
ここでは母集団形成を行う目的を3つ紹介し、目的を達成して得られるメリットも説明します。
2-1.計画的な採用を行うため
採用活動は、会社ごとに採用の目的を設定し、計画的な採用を行う必要があります。設定した採用の目的を達成できなければ採用成功とは言えません。
多くの会社にとって、採用の目的は「自社に合った人材を、必要な期日までに必要な人数だけ採用すること」であることが一般的です。採用の目的を達成する上では、目的に合わせた採用計画を立てるようにしましょう。
母集団形成を行うメリットは、最初に採用計画を立てて採用の目的を明確化するため、計画的な採用につながる点です。どのような人材を内定者とするか、どの程度の人数で母集団を形成するかをあらかじめ検討することで、採用の目的を達成しやすくなります。
2-2.社員の定着力を向上させるため
採用活動では、単に人材を採用するだけではなく、入社後の定着も考えることが重要です。
実際に、採用した人材が早期離職するケースは少なくありません。厚生労働省が公表するデータによると、2019年3月に大学を卒業した新規大卒就職者の約31.5%が、就職後3年以内に離職しています。
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します」
人材の早期離職を防ぐには、社員の定着力向上が急務と言えます。
母集団形成では、採用計画を立てて「自社に合う人材」を求める人物像に設定するため、会社と人材のミスマッチが起こりにくい点がメリットです。採用した人材が会社や仕事内容について「自分には合わない」と考えるケースが減り、社員の定着力を向上できます。
2-3.採用にかかるコストを無駄にしないため
採用活動ではさまざまなコストが発生します。具体例を挙げると、採用担当者の人件費や求人広告費、パンフレット制作費などです。
採用活動を無計画のまま進めた場合、採用にかかるコストが無駄になりやすいデメリットがあります。成果が得られない求人広告を出し続けたり、期日を定めずに長々と求人活動を続けたりするためです。自社に合わない人材からの応募が多数集まり、選考に時間がかかりすぎるケースもあるでしょう。
母集団形成を行うと、採用候補者の人物像・人数・選考の日程などを明確に定めた、メリハリのある採用活動の実施が可能です。採用業務の効率化にもつながり、無駄なコストの発生を防止できます。
3.母集団形成の方法9選
母集団の人数を多くするためには複数の方法でアプローチすることが必要です。ただし、複数の方法を併用すると採用コストがふくらみやすくなります。予算のバランスが取れるか、自社に合った方法であるかを検討して、適切な方法を選択しましょう。
ここでは、母集団形成の方法9選を紹介し、それぞれの方法について特徴やメリット・デメリットを解説します。
3-1.求人サイト
求人サイトは、求人情報を掲載して多様な人材にアプローチできる方法です。就職・転職活動を積極的に進めている人だけではなく、転職の情報収集段階にある潜在層にもアプローチできるため、応募者の幅を広げられます。
ただし、求人サイト上には多数の情報が存在するため、どれだけ魅力的な求人情報を出しても、求める人材の目に触れるとは限らない点がデメリットです。
また、多くの求職者が利用する求人サイトは、母集団が大きくなりすぎる恐れもあります。掲載する求人情報には、求める人物像や応募条件などを詳細に設定しましょう。
3-2.ハローワーク
ハローワークは厚生労働省が運営する職業安定所であり、求職者だけではなく人材を求める事業主も利用できます。
ハローワークを利用するメリットは、無料で求人情報を掲載できる点です。1か月・1回のみではあるものの求人掲載期間の延長が可能であり、予定より母集団の数が少ない場合にも対応できます。
デメリットは、地域のハローワークが管轄するエリアにしか求人掲載ができない点です。地方採用には向いているものの、規模の大きい採用活動ではハローワークは適さない方法と言えます。
3-3.人材紹介サービス
人材紹介サービスとは、就職・転職を希望する人材と企業をマッチングするサービスのことです。
人材紹介サービスを提供する紹介会社は、会社が求める人物像やスキル・経験・雇用条件などをヒアリングし、条件に合致する人材を紹介してくれます。採用のミスマッチが起こりにくく、採用成功につながりやすい点がメリットです。
デメリットは、人材1人あたりの採用コストが割高になる点が挙げられます。紹介される人材は紹介会社側である程度選定されるため、母集団の数を確保しにくい点にも注意しましょう。
3-4.合同説明会
合同説明会は、人材を求める会社が複数集まり、求職者に対して会社の事業や仕事内容の説明を行う場です。求職者との対話を通して、自社の魅力や社風をアプローチできるため、会社の認知度を大きくアップできる機会となります。
ただし、合同説明会は規模が大きすぎると自社のブースが他社に埋もれやすくなり、反対に規模が小さすぎると来場者が少なくなる点に注意しましょう。
専門的なスキル・経験を持つ人材で母集団形成をしたいときは、理系限定や業界特化型などの合同説明会がおすすめです。
3-5.オンライン説明会
オンライン説明会は、PCやスマホなどで視聴できる、オンライン開催の会社説明会です。
オンライン説明会はいつでも・どこでも視聴できるメリットがあり、就職活動に利用する学生が増えています。日時・会場を限定しないオンライン説明会は、企業側にとっても人材の幅広い認知を得られる方法です。
オンライン説明会のデメリットは、求職者とのコミュニケーションが取りにくく、途中で飽きられやすい点が挙げられます。画面越しでも反応が分かるようにチャットを導入したり、参加者の質問時間を設けたりするなど、求職者が飽きない工夫をしましょう。
3-6.SNS
LINE・Instagram・Twitterなどの幅広い層が利用するSNSは、母集団形成にも活用できる媒体です。主な手法には「SNS上で求人やイベント開催の告知をする」「採用候補者とコミュニケーションを取る」などが挙げられます。
採用活動におけるSNS活用のメリットは、企業認知を高めながら母集団形成ができる点です。SNSは多くのサービスが無料で利用できるため、採用コストの低減にもつながります。
SNSで母集団形成を行う際は、サービスによってユーザー層の偏りがある点に注意しましょう。採用したい人材の属性に合わせて、活用するSNSを選ぶのがポイントです。
3-7.ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、採用したい人材に対して能動的にアプローチする採用手法です。人材データベースの中から採用したい人材をターゲティングして、SNSのメッセージやスカウトメールで採用活動を進めます。
ダイレクトリクルーティングのメリットは、人材のターゲティングを行うことにより、採用のミスマッチが起こりにくい点です。人材への認知・応募にかかる期間が短くなるため採用までのスピードが早く、採用コストも抑えられます。
デメリットは、ノウハウがなければ成果を出しにくい点です。ダイレクトリクルーティングで母集団を形成するためには、ターゲティングの基準やアプローチの手法・タイミングをよく検討する必要があります。
3-8.リファラル採用
リファラル採用とは、信頼できる社員の人脈を活用する採用手法です。自社の社員に知人や友人を採用候補者として紹介してもらうことで、母集団形成ができます。
リファラル採用のメリットは、会社をよく理解している社員を紹介者とすることにより、採用のミスマッチが減らせる点です。採用活動の大部分を短縮できるため、採用コストも抑えられます。
リファラル採用のデメリットは、社員からの紹介がなければ採用が進まない点です。リファラル採用を行う際は、社員にリファラル採用の概要や、協力する利点をよく説明する必要があります。
3-9.自社の採用サイト
近年は、自社の採用サイトを開設・運営する会社が増えています。採用サイトは自社の魅力を独自に発信し、興味を持った人材からの応募も期待できるメディアです。
自社の採用サイトを運営するメリットは、掲載内容や文字数の制限を受けることなく、採用にかかわる情報を外部に発信できる点です。サイト作りだけではなく応募までの動線作りも行うため、採用のノウハウ蓄積を図れます。
デメリットは、早急な効果は期待できない点です。採用サイトを開設してから検索結果に表示され、さらに検索上位を獲得するまでには時間がかかります。
自社の採用サイトは長期的な視点で運営し、母集団形成を早く行いたいときは他の方法も併用することが大切です。
4.母集団形成の流れ
効果的な採用活動を行うためには、下記の流れで母集団形成を進めましょう。
- (1)採用計画を立てる
- (2)求める人物像と人数を設定する
- (3)求める人物像に合った母集団形成方法を検討する
母集団形成は採用活動の内容に大きく影響するため、それぞれのステップではポイントを押さえることが重要です。
ここでは母集団形成での3つのステップについて、具体的な方法と押さえるべきポイントを紹介します。
4-1.採用計画を立てる
母集団形成を進めるためには、最初に採用計画を立てましょう。採用計画とは、採用活動の基本的な方針を定めた計画のことです。会社の事業計画に基づき、「どの部署に」「いつまでに」「どのような人材を」「どのような方法で」採用するかといった内容を決定します。
採用計画を立てる際は、下記のポイントを押さえることが大切です。
- 経営層や人材を求める部署にヒアリングを行う
- 会社の規模や採用実績をもとに、自社の採用力を把握する
- 自社が属する業界の採用マーケットや、求職者の動向をチェックする
- 採用競合の採用状況をチェックし、差別化を図る
採用計画を立てると採用の目的が明確になり、効果的な採用活動を行えます。
4-2.求める人物像と人数を設定する
採用計画を立てると、採用活動を通して求める人物像と人数を設定できるようになります。
求める人物像を設定する際は、部署に対して行ったヒアリングを基に「採用者のペルソナ」を設計する方法がおすすめです。現場で求められている人材の特徴や、優秀な社員の行動特性を分析して、ペルソナに盛り込みましょう。
採用する人数は、部署へのヒアリングだけで決めることはできません。会社全体の人員構成を把握した上で、会社の事業計画や今までの採用実績に基づいて、採用する人数を決めることが大切です。
4-3.求める人物像に合った母集団形成方法を検討する
求める人物像と人数を設定した後は、母集団形成の方法を検討します。母集団形成は、求める人物像に合った方法で行うのが大切です。求める人物像の年齢層・就業経験・スキルなどの属性を分析し、適切な採用方法を選択しましょう。
たとえば、求める人物像がIT系のスキルを持つ人材である場合は、IT系のスキルで限定して母集団形成を行う必要があります。求人サイト・合同説明会・人材紹介サービス・ダイレクトリクルーティングなどが適切な方法です。
求める人物像からの認知度が低い場合は、自社の認知度を高める対応を取りましょう。オンライン説明会・SNS・自社の採用サイトなどで採用ブランディングを実施すると、自社の認知度を高めつつ母集団形成が行えます。
5.母集団形成を行うときのポイント
母集団形成を成功させるためのポイントは、採用活動が新卒採用か中途採用かによって異なります。特に新卒採用はスケジュールが綿密に決まっているため、採用までの流れを逆算して考える必要があります。自社の採用目的に合わせて、新卒・中途のポイントを踏まえた母集団形成を行いましょう。
ここでは、新卒採用と中途採用における母集団形成のポイントを解説します。
5-1.新卒採用の場合
新卒採用の場合は、政府によって採用スケジュールにルールが定められています。例を挙げると、広報活動の解禁は「卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降」、採用選考の活動開始は「卒業・修了年度の6月1日以降」です。
出典:内閣官房「2022年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請」
就活生の就職活動も、定められたスケジュールに沿って活発化します。タイミングを逃すと母集団形成が難しくなるため、広報活動や採用選考のスケジュールは綿密に組みましょう。
採用スケジュールにルールがある新卒採用は、多くの採用競合が存在する点も特徴です。自社が求める人材は、他社も求めている可能性が高いため、採用競合の動向は詳細にチェックする必要があります。
5-2.中途採用の場合
中途採用では一般的に、欠員補充・増員といった「即戦力の獲得」を採用目標に定めます。母集団形成も採用目標に合わせて、特定のスキル・経験を採用要件に設定することが大切です。
中途採用は多数の人材が常に存在するわけではなく、応募者数を集めにくいため、母集団形成をする際の課題になります。人材の数が少ない中で母集団を形成するためには、会社の認知度を高めるとともに、転職者が増える時期を押さえることが重要です。
退職者が増える時期は年度末に近い3月・4月やボーナス支給後の6月・12月、上半期と下半期の区切りである9月であると言われています。実際には退職する1~3か月前に転職活動を始める人が多いため、転職者の動きを想定して採用活動を進めましょう。
まとめ
採用活動における母集団形成とは、企業に対する応募者の集まりを作ることです。計画的な採用や社員の定着力を向上させるために注目する企業が増えており、人物像・人数・選考の日程などを明確化できるため採用業務の効率化が期待できます。
母集団形成の具体的な方法は、求人サイト、ハローワーク、人材紹介サービスの利用をはじめ、自社社員の人脈を採用につなげるリファラル採用などがあります。新卒採用は採用スケジュールにルールがあり、中途採用は常に多くの人材が存在するわけではないため、自社の採用目的に合わせた母集団形成を行いましょう。
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