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ブランディングの成功事例10選と失敗事例5選!成功のポイントも
ブランディングとは、商品・サービスにおいて独自のブランドを形作り、他社との差別化を図ったり自社の価値を高めたりするマーケティング戦略の1つです。あらゆるサービス・商品を販売する企業がブランディングに取り組むことで、社会的な信頼が向上し、結果として利益率が伸びたり優秀な人材を獲得できたりするなど、多くのメリットを得られます。
ブランドを高めるための手法にはいくつかありますが、そのすべてが実施したからといって必ず成功するわけではありません。失敗を避けるためには、成功事例・失敗事例を確認し、参考にすることがおすすめです。
そこで今回は、ブランディングの成功事例と失敗事例を、さまざまな企業・種類別に紹介します。ブランディングを成功させるため押さえるべきポイントも紹介するため、ぜひ参考にしてください。
1.【種類別】ブランディングの成功事例10選
ブランディングとひとくちに言っても、その種類にはいくつか挙げられます。
企業ブランディング | 社内・消費者・競合他社・投資家などの利害関係者(ステークホルダー)からの社会的価値を高めるブランディング手法 |
---|---|
商品ブランディング | 自社商品に対するブランディング手法 |
リブランディング | 従来のブランディングを一新し、ステークホルダーからの評価を変えるブランディング手法 |
サービスブランディング | サービスに対するブランディング手法 |
インナーブランディング | 社外ではなく、社内の人間(社員・株主など)に向けたブランディング手法 |
ブランディングデザイン | 商品・サービスのターゲットにブランドコンセプトやメッセージを視覚的に伝えるブランディング手法 |
ブランディングの実施を検討している企業は、まず自社の現状と課題を把握したうえで、どのような手法のブランディングに取り組むとよいかを考える必要があります。
また、自社に適したブランド戦略を立てるためには、成功事例の確認が欠かせません。ここからは、あらゆる手法を用いた企業のブランディング成功事例を紹介します。
1-1.【商品ブランディング】NIVEA
NIVEA(ニベア)は、1911年にドイツで発売されたスキンケアクリームのトップブランドです。「NIVEACream」とシンプルに記載された青い缶のスキンケアクリームは、誰もが目にしたことのあるヒット商品と言えるでしょう。現在では約200もの国で販売されており、日本では1968年にニベア花王株式会社から販売が開始されました。
NIVEAのブランディングが成功した主な要因は、「強いブランドアイデンティティ」です。NIVEAは、スキンケアクリーム自体の機能的価値はもちろん、「性別・老若男女問わず、家族みんなで使える」「肌が触れ合うような深い愛情を守り続けられる」といった情緒的価値も訴求しています。
デザイン・匂い・肌触りなどを通して「幼いころ、母親に塗ってもらった」という深い愛情に包まれていた幼少期の記憶とともに、NIVEAのブランドを想起する人も多いでしょう。時代を超えたブランド価値は、NIVEAが現在もなお変わらず愛されている大きな要因と言えます。
1-2.【商品ブランディング】Red Bull
Red Bull(レッドブル)は、1984年にオーストラリアで設立された、エナジードリンクシリーズで有名な企業です。設立から3年後となる1987年には、今や世界中から愛されるエナジードリンク「Red Bull」の販売を開始しました。当商品が日本に参入されたのは、2005年です。
Red Bullは、エナジードリンクの中でも比較的高価でありながら、若者からも絶大な人気を誇っています。ここまで愛されるようになった理由には、Red Bullの商品ブランディングが大きく関係します。
Red Bullは、「翼をさずける」がコンセプトとなっており、このフレーズを聞くとすぐにRed Bullを連想する人も多いでしょう。このコンセプトには、「Red Bullはあくまでも主役を応援するためのアイテム」であるという思いが隠れています。このような姿勢を長年貫いたことで、多くの企業・消費者からの信頼が向上しました。
また、街中でエナジードリンク商品を無料配布するという方法で上手に顧客とのタッチポイントをつくってきたことも、Red Bullのブランド価値が高まった一因と言えます。
1-3.【リブランディング】マツダ
マツダは、1920年に設立された日本の自動車メーカーです。設立から着実に支持を集め、現在もなお多くの販売実績を上げているマツダは、1990年代にブランディングに失敗した経験があります。これによりブランド価値が大きく低下し、「マツダ地獄」と称されるようになりました。
マツダ地獄から脱却し、失ったブランド価値を取り戻すために、マツダは自社のファンである少数の既存顧客にフォーカスした製品開発を行います。「Be a Driver(人生のドライバーになろう」という新たなキャッチフレーズを打ち立てつつ、リブランディングとして大胆な方向転換を図りました。結果としてリブランディングは大成功し、ブランド価値の回復はもちろん、競合他社にはない独自のブランドポジションの確立も叶いました。
1-4.【リブランディング】ヤンマー
ヤンマーは、1912年に設立された、日本の発動機・農機・建設機械などの製造や販売を手掛けるトップブランドです。これまで幅広い消費者に幅広い商品を販売してきましたが、「企業名は知られているのに、事業内容や商品・サービスについての認知度が低い」といった課題がありました。そこでヤンマーは、創業100周年となる2012年を機に、リブランディングプロジェクトを始めます。
リブランディングプロジェクトでは、消費者からのブランド認知度を高めるため、そしてユーザーイメージと自社事業のミスマッチを解消するため、機械や作業ウェア、ロゴマークといったデザインの全体的なリニューアルを行いました。加えて、新たなブランドステートメントを伝えるべく、CM・広告を集中投下したことにより、「Y」をモチーフにしたプレミアム感漂う新デザインは多くの人の目に触れられ始めます。
このリブランディングは結果として大成功を収め、新規・既存顧客からのポジティブな反応が得られただけでなく、社内の求心力も向上しました。
1-5.【サービスブランディング】スターバックス
スターバックスは、1971年にアメリカで設立されたコーヒーチェーン店です。日本では1996年に東京で第1号店が開業しました。現在では新作が出るたびに注目を浴びる大人気コーヒーチェーン店となっていますが、これほどの人気を集めた要因にはスターバックスのサービスブランディングが大きく関係します。
スターバックスは、自社のメイン商品であるコーヒーを主役と考えていません。主役は「人」、いわゆるコミュニティや心の豊かさであり、コーヒーはあくまでも人々の心を豊かにするための脇役だと考えています。顧客との接点となるバリスタの育成にも力を入れ、商品ではなくサービスそのものの品質向上に努めました。
結果として、スターバックスは消費者にとって「居心地のよい特別な場所」というイメージが定着し、競合他社にはない独自のブランドポジションを確立できました。
1-6.【サービスブランディング】東京ディズニーランド
東京ディズニーランドは、1983年に開業した、日本で最も人気のあるテーマパークです。東京ディズニーランドもまた、「夢の国」にふさわしいサービスブランディングを手掛けています。
ディズニーの世界に100%入り込めるようなパーク設計はもちろん、特に力を入れているのが従業員の教育です。従業員は皆「スタッフ」ではなく「キャスト」と呼称し、パーク内でゲストが困っているときは必ず何らかの助けになれるよう、徹底した教育が行われています。ディズニーランドが子どもから大人まで楽しめるのは、この徹底したサービスブランディングも1つの要因と言えるでしょう。
1-7.【インナーブランディング】アサヒビール
アサヒビールは、1889年に設立された日本の大手ビールメーカーです。アサヒビールでは、一人ひとりの社員がブランドのアンバサダーとして活躍できるようなインナーブランディングに力を入れています。
アサヒビールが実施するインナーブランディングの代表的な手法は、「支店長ワークショップ」です。支店長ワークショップにより、全国各地の量販業務に携わる支店長を対象に、ブランドの価値が伝わる商品の陳列方法や営業側の意識改革を促進する方法を検討しました。多くの商品を販売するためには、「ブランドを育てる」という意識が重要という考えのもと、定期的に手段を変えたマーケティング活動は、アサヒビール独自のインナーブランディングと言えます。
1-8.【インナーブランディング】三井化学
三井化学は、1997年に設立された三井グループの総合化学メーカーです。三井化学では、BtoBビジネスであることから、商品・サービスの価値が認知されにくいという課題がありました。
このような状況が社員のモチベーションに大きな悪影響を及ぼすと考えた三井化学は、社会とのつながりをもてるオープン・ラボラトリー活動「そざいの魅力ラボ」を実施します。結果として、インナーブランディングは大きく成功し、社員の意識改革・成長の促進につながりました。
1-9.【ブランディングデザイン】SOU・SOU
SOU・SOUは、2002年に京都で設立された和装製造販売を手掛けるアパレルブランドです。ライフスタイルの変化とともに日本の伝統文化である和装が廃れているという状況を脱却すべく、SOU・SOUは「伝統的な和装を現代に合う形で復活させる」ことを目的に、新たなブランディングデザインに取り組みます。
結果として完成したのが、現代のトレンドを押さえた新たな和装デザインです。情緒のある和の雰囲気と、現代の流行に沿ったデザインが融合された着衣は、多くの人の目に留まる革新的な和装となりました。
1-10.【ブランディングデザイン】SHIBUYA109
SHIBUYA109は、1979年に東京都渋谷区で開業した大型ファッションビルです。かつての若者と現代の若者では、トレンドが大きく異なることを踏まえ、2018年に一般公募で新たなロゴデザインの見直しを行うといったブランディングデザインを図りました。
新ロゴの一般公募は若者ももちろん参加することができ、企業理念である「新しい世代の“今”を輝かせ、夢や願いを叶える」が実現したイベントでもあります。新ロゴはピンクと紫のカラーが特徴的となったインパクトのあるデザインで、若者のトレンド発祥地である渋谷らしさを表現しています。
2.【要確認】ブランディングの失敗事例5選
ブランディングは成功事例だけでなく、失敗に終わる事例もいくつかあります。企業によるブランディング事例の成功パターンだけでなく失敗パターンも参考にしておくことで、いざ自社で何らかのブランディング手法を実践した際の予期せぬ失敗を最大限防ぐことが可能です。
ここからは、さまざまな企業のブランディング失敗事例を5つ紹介します。
2-1.KAGOME
KAGOME(カゴメ)は、1899年に日本で設立された食品・飲料・調味料の大手総合メーカーです。KAGOMEは総合食品メーカーとしてのポジションを目指す中で、あらゆる事業を拡大させていました。しかし、大量に在庫を抱えることになった結果、安価に販売しなければならないといった事態に陥り、ブランドイメージは大きく低下してしまいます。
賞味期限などによって販売期間にシビアな商品を取り扱うにもかかわらず、多くの在庫を抱えてしまったことが大きな失敗理由です。
2-2.Gap
Gap(ギャップ)は、1969年にアメリカで設立されたアパレルブランドです。1995年には東京都で日本第1号店が開業しました。Gapはブランディングデザインを図るため、2010年に突如ロゴの新デザインを発表し、多くのファンたちによって批判を含む論争が起こりました。
多くの批判を受け、Gapはわずか1週間程度で現在もなお続く旧ロゴへと戻しましたが、その損失額は合計で100億円以上とも言われています。加えて、消費者からの評価を受けてロゴを元に戻すという行動に対し、「柔軟な姿勢を示してくれた」と称賛するユーザーもいれば、「優柔不断だ」とさらなる反対意見を述べるユーザーもいました。
2-3.大塚家具
大塚家具は、1969年に日本で設立された家具量販店です。それまで汎用家具マーケットの中では上位にのぼるほど人気の家具ショップでしたが、2009年に創業者の娘が社長に就任して以降、父と娘の経営方針の違いなどによって「お家騒動」が起こりました。
家族内で起きたこの騒動により、顧客からの信頼度は著しく低下します。加えて、価格帯を頻繁に変更したり、セールイベントを頻繁に開催したりすることによって、企業イメージはさらに低下してしまいました。
2-4.ソニー
ソニー(SONY)は、1946年に日本で設立された総合電機メーカーです。ソニーは「人の心に訴えるモノづくり、“感動価値”創造に向けて」というコンセプトを掲げて2003年にAV機器の高級ブランド「QUALIA」の開発を開始します。
しかし、高級ブランド化に強いこだわりをもつあまり、いわゆる「作り手側による独りよがりの商品」という印象が徐々に強まりました。結果としてコンセプトが統一せず、失敗に終わってしまいます。消費者のニーズや求める価値を把握しきれていなかったことが、失敗の大きな原因と言えるでしょう。
2-5.トロピカーナ
トロピカーナ(Tropicana)は、1947年にアメリカで設立された、主にフルーツベースの飲料水の製造・販売を手掛ける企業です。トロピカーナは2008年に、ブランディングデザインを図るべく、パッケージデザインを「果実にストローが直接刺さったデザイン」から「グラスにジュースが入っただけのデザイン」に大きく変更します。また、それまで横に表記されていた「Tropicana」の文字も、デザイン変更に伴い縦表記となりました。
これにより、トロピカーナの新鮮さをはじめとしたイメージが損なわれ、顧客に「ノーブランドのフルーツジュースを買っているような気分だ」と思わせてしまいます。数々の批判を受けて、トロピカーナは約1か月後に旧デザインへと戻しましたが、売り上げは20%ダウンしリブランディングは失敗に終わってしまいました。
3.【事例から見る】ブランディングを成功させるために押さえるべきポイント
ブランディングを成功させるためには、ブランドコンセプトの明確化が重要です。また、ブランドコンセプトを明確にするほかにも押さえるべきポイントはいくつかあります。
- ブランドの構成要素を把握する
- 自社の強みを分析する
- 企業規模に適したブランディング方法を取り入れる
- 短期的な成果を期待しない
最後に、ブランディングを成功させるために押さえるべき4つのポイントを詳しく解説します。
3-1.ブランド価値の構成要素を把握する
ブランディングを行う際は、まずブランド価値の構成要素を正確に把握することが重要です。ブランド価値を構成する要素には、主に下記の3つが挙げられます。
機能的価値 | 商品・サービスにおける、品質・機能・利便性がもたらす価値のこと |
---|---|
情緒的価値 | 商品・サービスに費用を支払ったり、商品・サービスを利用したりすることで感じる価値のこと |
自己表現価値 | 商品・サービスを利用したり身につけたりすることで理想の自分像を表現できる価値のこと |
消費者が上記のような価値を感じて、その商品・サービスに愛着を感じることができなければ、ブランディングに成功したとは言えません。これらの構成要素を把握したうえで、それぞれの価値に対して前向きな印象を与えられるような手段をとる必要があります。
3-2.自社の強みを分析する
ブランディングに成功する企業は、いずれも「自社の強みを活かしている」点が共通しています。自社の強みを活かすためには、自社の強みを分析し、消費者が求める価値を把握したうえで、再定義することが重要です。
自社の強みを分析するためには、まず競合他社と自社を比較したうえで、3C分析・SWOT分析などのフレームワークを活用するとよいでしょう。実際に顧客や社員の意見を聞くこともポイントです。
3-3.企業規模に適したブランディング方法を取り入れる
大企業の場合はある程度のコストを掛けて施策を実施できる一方で、中小企業は予算が限られていることから大企業のように多額のコストを掛けることは困難でしょう。また、コストを掛けたからといって成功するわけでもありません。
ブランディングを成功させるためには、企業規模に適したブランディング方法を取り入れることが最も重要です。例えば予算の限られた中小企業は、ユーモアなコンセプトを掲げて一貫した商品・サービスを提供したり、大企業は潜在顧客の分析に投資し、ニーズにしっかり適した商品・サービスを提供したりなどです。状況や課題に適した手法はもちろん、その手法に何らかの工夫を凝らしたり、費用の掛けどころを考えたりすることで、効率よく自社ブランドを印象付けられるでしょう。
3-4.短期的な成果を期待しない
ブランディングは、企業の長期的な安定経営を目指すためにも必要なものです。消費者から確固たる信頼を得るためには、長い期間をかけて継続的に評価される必要があります。そのため、短期的な成果を期待してはなりません。
短期的な成果を期待することで、ブランディングの軸がぶれ、早い段階で方針を大きく転換してしまうケースも見られます。しかしこれでは、消費者から「優柔不断」「何を求めているのか・何を求めていいのか分からない」と判断され、結果として顧客離れを招く可能性があります。
ブランディングは、目先の売り上げや利益だけに着目せず、長期的な視野で行うことが重要です。多少の問題が起きても一貫してブランディングに努める姿勢は、消費者・社員からの後の信頼につながるでしょう。
まとめ
ブランディングとは、商品・サービスにおいて独自性の高いブランドを形作り、他社との差別化を図ったり自社の価値を高めたりするマーケティング戦略です。企業・商品・サービスのブランディングを図る際は、企業ブランディング事例(成功例・失敗例)を幅広い視点で確認し、それらの情報を参考にしながら企業ブランド戦略立案を行いましょう。
また、ブランディングを成功させるためには、ブランドコンセプトの明確化やブランドの構成要素の把握、さらに自社の現状分析が欠かせません。加えて、短期的な成果を期待せず、企業規模に適したブランディング方法を継続して取り入れることも重要です。ここまでの内容を参考に、ぜひ自社に適したブランディングを実施してみてはいかがでしょうか。
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