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ブランディングとは?取り組む際の重要ポイントや流れなど
マーケティングを行う中で、「ブランディング」という方法を見聞きしたことがある経営者・マーケティング担当者も多いのではないでしょうか。ブランディングは企業の価値を高める目的で行われる取り組みですが、ブランディングを実践することで得られる具体的なメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
当記事では、ブランディングの定義や種類、実施する目的と得られるメリットについて解説します。ブランディングに取り組む際のポイントや実施する際の主な流れ、実際のブランディング事例も併せて確認し、自社の企業価値を高められるブランディングを実践しましょう。
1.ブランディングとは?
「ブランディング(Branding)」とは、ブランドを構築するという意味のビジネス用語であり、さまざまな人に「この企業ならでは」のイメージや好感を持ってもらうことです。
ブランディングに取り組むことで他社との差別化を図れるため、集客や販売促進、広告宣伝、採用などの活動で有利になります。ブランドアイデンティティを持つオンリーワンの企業となることにより、企業価値の向上も期待できるでしょう。
1-1.ブランディングに取り組む目的
ブランディングの目的は、ブランドイメージを持ってもらいたい対象(ターゲット)によって異なります。
■ブランディングの目的
主なターゲット | 目的 |
---|---|
消費者・顧客 | 【集客力・市場競争力の強化】 ・売上や利益の向上 ・経営の長期的安定 |
学生(就活生)・転職者などの求職者 | 【採用力の強化】 ・採用エントリー数の増加 ・ミスマッチ予防 ・効率的な採用活動の実現 |
自社の従業員 | 【組織力の強化】 ・従業員満足度と連帯感の向上 ・顧客満足度の向上 |
ブランディングに取り組む際には、目的やターゲットを明確にした上で実施することが大切です。
1-2.ブランディングの種類
ブランディングの取り組み方には、次の3つの分類があり、各分類はさらに2種類のブランディング手法に細分化できます。
ブランディングの種類 | ブランディングの対象 | |
---|---|---|
「何を」ブランディングするか | 企業ブランディング | 企業(自社) |
商品・サービスブランディング | 自社の商品(製品)・サービス | |
「誰に」ブランディングするか | アウターブランディング | 消費者(ユーザー)や顧客など社外の人 |
インナーブランディング | 従業員・社員 | |
「誰が」ブランディングするか | BtoCブランディング | BtoC企業が一般の消費者に対して行う |
BtoBブランディング | BtoB企業が取引したい他社に対して行う |
ブランディングの種類を理解することで、より相手に適したアプローチを選ぶことが可能となります。ブランド構築の対象を明確化して方向性を定め、企業の社会的価値や商品・サービス価値、ブランド提供価値を高めるための有効な戦略を立てましょう。
1-3.ブランディングと似た言葉の違い
ブランディングを的確に行うためには、「ブランディング」と似ている言葉や紛らわしい用語とを区別する必要があります。ここでは、「ブランディング」と似た3つの言葉との違いについて簡単に解説します。
■ブランディングと似た言葉との違い
・「ブランド」との違い
「ブランド」とは、名称やブランドロゴ、キャッチコピーなど、他社との識別を図る役割を果たしている独自性のある記号を指します。提供価値の差別化を図り、市場競争力を高めることはブランディングの目的の1つです。ブランドはブランディング活動に欠かせない構成要素と言えるでしょう。
・「リブランディング」との違い
ブランディングは、1回で完了する取り組みではありません。時代や消費者ニーズ、ターゲット層の変化のしかたによっては、変化に応じたブランディング戦略の改善が必要です。このように、すでに存在する自社ブランドを再構築して改良してブランド認知度を再度高めるための施策を「リブライディング(ブランド再生)」と言います。
・「マーケティング」との違い
「マーケティング」とは、消費者によって企業の商品・サービスが認知され、売上や利益がアップするしくみを作るための活動です。ブランディングがターゲットに自社のイメージを持ってもらう努力をする取り組みであるのに対し、マーケティングは自社のイメージをターゲットに伝える取り組みを指します。
1-4.ブランディングのよくある誤解
「ブランディング」という言葉がよく使われるようになった現在では、ブランディングに対する誤解も生じています。ここでは、ブランディングに関する代表的な誤解を紹介します。
■ブランディングに関する誤解(例)
- ブランディングとは、ロゴマークの刷新やロゴに関するルール策定を行うことである。
- ブランディングとは、デザイン面を統一して見た目を変えることである。
ロゴはブランドを象徴する記号となるため、ブランディングを行う上で非常に重要な存在です。しかし、ロゴを刷新したりルールを決めたりするだけでは、ブランディング本来の目的である企業価値の向上や市場競争力の強化は実現できません。
また、ブランドデザインを統一することはブランディングにおける1つの方法と言えますが、単に統一するだけでなく「そのデザインにする理由」を明確にする必要があります。相手にブランド戦略を伝える手段としてのデザインとなっているか、十分に検討することが重要です。
2.【企業・消費者別】ブランディングに取り組むメリット
企業がブランディングに取り組むことは、企業側だけでなく消費者側にもメリットをもたらします。それでは、企業や消費者が得られるブランディング効果にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、企業がブランディングに取り組むことによって得られる「企業側」「消費者側」の両方のメリットについて確認しましょう。
2-1.企業側のメリット3選
ブランディングによる企業側のメリットとして、次の3つが挙げられます。
■ブランディングにおける企業側のメリット
・価格競争に巻き込まれずに済む
ブランディングに成功すれば、消費者が価格以外のポイントを考慮して、自社の商品・サービスを選択してくれるようになります。高い優位性から利益率の低下につながる価格競争に巻き込まれずに済むため、売上や利益を安定化させることができるでしょう。
・顧客のリピート率が上がる
ブランディングがうまくいけば、自社の商品・サービスを気に入ってくれる顧客が何度も購入・利用してくれるようになります。自社商品に愛着があるリピーターを増やすことで、ブランド価値の向上や企業収益アップにもつながるでしょう。
・採用活動を円滑化できる
採用ブランディングとは、人材採用における活動を有利に進める上で重要なブランディングのことです。採用市場での認知度向上により企業への入社希望者が増加する可能性があるため、優秀なターゲット人材を確保でき、採用活動をスムーズに進められるでしょう。
2-2.消費者側のメリット3選
企業のブランディングへの取り組みは、消費者に次のようなメリットをもたらします。
■ブランディングにおける消費者側のメリット
・商品やサービスを探すコストの削減とリスクの低減が可能になる
ブランディングにより、消費者は商品やサービスを比較検討する労力を削減できます。また、購買行動やサービスの利用にまつわるリスクを最大限回避することが可能です。
・商品やサービスが持つ価値を獲得できる
商品やサービスが持つ価値には「機能的価値(商品・サービス自身の価値)」「情緒的価値(心理面での価値)」の2つがあります。ブランディング成功を果たした商品・サービスではこれらの価値も高いため、満足度も高まるでしょう。
・自己イメージを商品やサービスに投影できる
ブランディングによって商品やサービスのイメージが確立していると、消費者はその商品・サービスに自分を投影して楽しむことができます。また、他者に自分が思い描く自己イメージを伝達するアイテムとしても活用できるでしょう。
3.ブランディングに取り組む際の重要ポイント5つ
ブランディングを成功させるためには、次のような重要ポイントを押さえた上で取り組むことが大切です。
■ブランディングを実施する際に押さえたい重要ポイント
- (1)ブランド像を明確にする
- (2)商品・サービスのことをしっかりと把握する
- (3)作り込みすぎない
- (4)一貫性を大切にする
- (5)周囲を巻き込む
ここでは、上記の5つのポイントについて詳しく紹介します。
3-1.ブランド像を明確にする
ターゲットに響くブランディングを行うためには、ブランドのイメージを明確化することが大切です。
消費者は自分にとって、無価値な商品・サービスに対して興味を示すことはありません。「どのような価値を持つ商品・サービスを届けたいか」という視点から、ターゲットが価値を感じ、関心や好感を持つようなブランド像を具体的に考えましょう。
3-2.商品・サービスのことをしっかりと把握する
ブランディングの取り組みでは、自社の商品やサービスの強みや魅力、利用するメリットなどを十分に把握し、深く理解することが大切です。
あいまいなイメージからブランディングを行うと、消費者はブランディングでのイメージと実際の商品・サービスとのギャップに失望する恐れがあります。企業・消費者の両方にとっての不利益につながるため、自社の商品・サービスの特徴や長所などをしっかり把握した上で的確なブランディングを行うことを心がけましょう。
3-3.作り込みすぎない
ブランディングの成功を目指すために、目立つデザインや前衛的なロゴ、響きのよいブランドメッセージを採用するケースは少なくありません。
しかし、作り込みすぎるとブランド像がぼやけてしまい、ターゲットに伝えたいことがあいまいになってしまいます。こだわりによって自分本位なデザインにならないよう、ターゲットの目線を常に意識し、「自分が発信したい内容が正確に伝わるか」を考えるようにしましょう。
3-4.一貫性を大切にする
人間は一貫性のあるものに安心感を抱きやすく、矛盾のあるものや主張が二転三転するものには不信感を抱きやすい傾向があります。
たとえば、シンプルで高級感のあるデザインが特徴的な企業であるにもかかわらず、派手なデザインの広告を打てば、消費者はブランド像がつかめず混乱するでしょう。発信したいメッセージ・価値観や印象づけたいブランド像から遠く離れた取り組みはせず、一貫性を持ったブランディングを行うことが大切です。
3-5.周囲を巻き込む
ブランディングを実施する際には、自社の商品やサービスの認知度を高めることも重要なポイントです。広告宣伝費に多額のコストをかけられない場合には、SNSやインターネットを活用し、積極的に情報発信を行いましょう。
自社アカウントを作成して情報を発信することも大切ですが、なるべく多くの人に情報を伝えるためには周囲を巻き込むことが重要です。知人など身近な人を巻き込むことで、より広い範囲に企業や商品に関する情報を届けることができるでしょう。
4.【STEP別】ブランディングを実施する際の流れ
ブランディングを実施する際には、ブランディングの基本的なプロセスに基づいて取り組みを進めていくことが大切です。
それでは、ブランディングを成功させるためにはどのような手順で取り組みを進めていくとよいのでしょうか。ここでは、ブランディングを実施する際の流れと各段階のポイントについて解説します。
4-1.【STEP1】現状の分析を行う
ブランディングの取り組みを開始する前に、自社を取り巻く現状の分析を行いましょう。自社の内部環境だけでなく、競合他社・競合ブランドや顧客の動向、ターゲット市場、社会情勢、経済状態などの外部環境についての調査を行うことが大切です。
調査で得た情報は、「3C分析」「PEST分析」「SWOT分析」などの手法を用いて分析を行います。環境分析を通して自社の現状・課題を客観的に理解しましょう。
4-2.【STEP2】情報収集をする
現状分析から得た情報を1つの場所に集約し、ブランディングに携わるメンバー全員と情報を共有しましょう。自社の強みや弱み、消費者のニーズ、競合他社や市場の動向をふまえて、自社独自の価値を見つけ出してください。
自社独自の市場価値を見い出すことができたら、商品・サービスのブランド像やターゲットを具体化するためのあらゆる情報を収集します。収集した情報をもとに、ブランドコンセプトの方向性を検討しましょう。
4-3.【STEP3】ブランドコンセプトを決める
ブランディングの基本方針とも言えるブランドコンセプトの策定を行います。さまざまな環境要素をふまえ、市場におけるブランドの立ち位置(ブランドポジショニング)を決めましょう。
ブランドポジショニングが決定したら、ブランドのポジションや概要を的確に表す言葉(ワーディング)を考えます。ポジショニングもワーディングも、ブランドコンセプトを決める上で重要な過程であるため、十分に検討し戦略的に決定することを心がけましょう。
4-4.【STEP4】ブランディング施策を実行する
ブランドコンセプトに基づいて策定された事業計画に沿って、ブランディング施策を実行します。企業ロゴの作成や広告による宣伝、SNSでの情報発信など、商品やサービスのブランド像に合った施策を行いましょう。
ブランディング施策を実行する際には、ブランドの軸がブレないよう注意することが大切です。デザインやメッセージの内容、トーン・マナーに一貫性があるか顧客視点・企業視点の両方のチェックを怠らないようにしましょう。
4-5.【STEP5】分析・改善をする
ブランディング施策の実行後は、事前に決定した評価方法に基づいて分析しましょう。
ブランディング施策の検証方法としては、アンケート調査やアクセス解析などが挙げられます。成功要因や失敗要因、具体的な対策法や次回の目標などについて考えて改善し、次回以降のブランディング施策を成功に導きましょう。
5.ブランディング事例4選
ブランディングに取り組む際に実際の事例を参考にすることで、ブランディングのイメージがわきやすくなり、より効果的なブランディングを実行できると考えられます。
ここからは、ブランディングの事例を4つ紹介します。企業事例を確認し、自社が行うブランディングの参考にしましょう。
5-1.近畿大学
「近畿大学」は「絶対に不可能」とされていたクロマグロの養殖に、世界で初めて成功した大学として広く知られています。
研究成果が大学名と結びついて世間に広く浸透することは、非常に珍しいケースです。近畿大学は養殖マグロのブランド名に「近大マグロ」と自らの学校名を冠することで、商品(マグロ)と大学の両方のブランディングを行うことに成功しました。「不可能を可能にする力がある大学」として、入学希望者も増加したとされています。
5-2.福島屋
東京都羽村市に本社を置くスーパーマーケット「福島屋」は、全国から安心・安全でお客さんにおいしく食べてもらえる食品のみを吟味・セレクトして店頭に並べています。
品質が保証されたユニークな商品を取り扱うことで他社スーパーとの差別化に成功し、「食を楽しみたい」というお客さんからの熱烈な支持を集めることができました。お客さん目線の強いこだわり・理念が、福島屋のブランド価値を向上させることにつながったと言えるでしょう。
5-3.リゾートインヤマイチ
長野県小谷村にある「リゾートインヤマイチ」は、もともとスキー客を中心とする宿泊施設でしたが、スキー客に依存する経営に限界を迎えつつありました。このような状況の中で、地域で生活する人にとっては日常の一部である「農業」を商品化することを思いつきます。
宿泊客にとっては「非日常」である農業体験をセットにした「体験型宿泊」は、スキー客に依存しない新たな魅力を生み出しました。小谷村ならではの過ごし方・世界観を提案することにより、現在では多くの旅行客が訪れる施設として再生されています。
5-4.UNIQLO
UNIQLOは世界的にも有名なアパレルブランドですが、かつては「安くてダサい」というイメージで敬遠する人も少なくありませんでした。良質ながらもシンプルすぎる面があったため、「他人とかぶりやすい=ダサい」というイメージが作られてしまったためです。
そこで、「LifeWear(究極の普段着)」というブランドコンセプトを打ち出し、あらゆる人の生活ニーズにあったシンプルで良質な服をデザインするようになりました。現在では、著名なデザイナーや有名企業と協業して商品を作るなど柔軟な姿勢で新たなファンを取り込み、「シンプルで洗練されたブランド」として再生を果たしています。
まとめ
「ブランディング」は、ターゲットに「この企業ならでは」のイメージを持ってもらい、他社との差別化を図る取り組みです。ブランディングには企業・消費者の双方に利益があるため、ポイントや基本的な流れをしっかりと押さえた上で実施することをおすすめします。ブランディングの成功事例も参考に、自社のブランディングを考えましょう。
ブランディングを行う際には、社内の人間が自社について十分に把握した上で進めることが重要ですが、取り組みの過程で客観的な視点を失うことも珍しくありません。ブランディングに取り組む際には、豊富な経験を持つブランディング会社など、ブランディング支援のプロを活用することも検討しましょう。
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