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ジョブ型雇用とは?メリット・デメリットや導入するポイントを解説
少子高齢化や終身雇用制度の崩壊などが進む中、国内ではジョブ型雇用を導入する企業が増えつつあります。人を採用してから適した部署に配置する「メンバーシップ型雇用」とは異なり、ジョブ型雇用の特徴は職務に合った人材を採用することです。
当記事では、ジョブ型雇用の概要をはじめ企業が導入するメリット・デメリットを解説します。導入のポイントも紹介しているので、ジョブ型雇用人事制度について詳しく知りたい方はぜひご一読ください。
1.ジョブ型雇用とは?
ジョブ型雇用とは、「職務」を基準にして採用や人材配置をする人事制度のことです。自社における一つ一つの職務について、業務内容や役割をあらかじめ定義した上で、採用活動を始める特徴があります。
これまで一般的だった日本型雇用システムは「メンバーシップ型雇用」と言われます。まず人を採用した上で、一人ひとりのスキルや経験を踏まえて適した部署に配置する、いわば「人」を基準にした制度です。しかし課題として、国内で少子高齢化や終身雇用制度の崩壊などが進む中、メンバーシップ型雇用だけでは日本企業の成長が難しくなってきています。
実際に、経団連では、2022年3月31日の「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」において、日本市場の状況について下記の通り報告しています。
これまでの新卒一括採用と企業内でのスキル養成を重視した雇用形態のみでは、企業の持続的な成長やわが国の発展は困難になる。そして、今後は、日本の長期にわたる雇用慣行となってきた新卒一括採用(メンバーシップ型採用)に加え、ジョブ型雇用を念頭においた採用(ジョブ型採用)も含め、学生個人の意志を尊重した複線的で多様な採用形態に秩序をもって移行することが必要となる。
引用:厚生労働省「第5回 今後の若年者雇用に関する研究会」/引用日2022/11/28
企業を取り巻く環境が変化する中、日本企業が世界で通用する競争力をもつために、ジョブ型雇用の重要性は今後ますます高まるでしょう。
2.ジョブ型雇用のメリット
ジョブ型雇用が注目されるのは、企業にとって多くのメリットがあることも関係しています。自社におけるジョブ型雇用の有効性を判断する上でも、どのような好影響がもたらされるのかを把握することは大切です。
ここでは、ジョブ型雇用がもつ3つのメリットについて紹介します。
2-1.ミスマッチを抑えられる
採用後に担当してもらう職務が明確になっている上で募集を始めるため、企業とマッチ度の高い人材が集まりやすいことがメリットです。選考過程においても、応募者のもつスキルが自社の求めるレベルや内容に合致するかどうかを判断することに集中できます。
ミスマッチを防止できれば、自社で長く働いてくれる可能性が高まるので、組織拡大や採用コストの節約などにもつながります。短期的な好影響だけでなく、将来的に見ても企業に複数のメリットをもたらすでしょう。
2-2.即戦力が期待できる
求職者の中には、経験を生かしてすぐに活躍したいと考える人が少なくありません。ジョブ型雇用では、求めるスキルや経験などをベースに採用活動を進めることから、専門性の高い分野について豊富な知識・スキルを身につけた即戦力人材の獲得に向いています。
メンバーシップ型雇用は「人」ありきの採用なので、入社後の育成が前提になりやすいことが特徴です。一方で、ジョブ型雇用の元で採用した人材は、入社の段階で十分な能力をもっているため、育成にかけるコストや労力も抑えられます。
2-3.組織の生産性向上につながる
ジョブ型雇用を実施するには、既存の業務内容や役割を一度整理することから、自社にとって本当に必要な業務が明確になります。反対に、不要な業務についても浮き彫りになるため、組織全体の生産性向上につながることもメリットです。
組織から無駄が排除されることは、従業員が自分の力を発揮しやすい環境づくりにもなります。最小限の労力で最大限の成果を出せるようになり、収益性が向上することもメリットの1つです。
3.ジョブ型雇用のデメリット
ジョブ型雇用には複数のメリットがある一方で、デメリットもあります。良い面だけを見て導入すると、かえって組織に混乱を起こす可能性が高くなるため、デメリットも踏まえて慎重に検討することが重要です。
ここでは、ジョブ型雇用のデメリットを3つ紹介します。
3-1.業務の柔軟性が低くなる
ジョブ型雇用では、担当する業務内容や責任範囲、必要なスキル・経験などがまとめられた「ジョブディスクリプション(職務記述書)」に沿って業務が遂行されます。雇用契約も職務記述書に沿って結ぶことから、取り組む内容が明確にはなるものの、決められた業務以外に取り組まないケースが増え、柔軟性が低下しやすいことがデメリットです。
担当者不在や急なトラブルが発生した場合には、自分の担当以外の業務も助け合う雰囲気をつくるなど、柔軟性の低下を防止する取り組みが必要です。
3-2.転職されやすい
ジョブ型雇用では、求職者視点でもスキルや経験を生かせることが第一条件になるため、企業自体へのエンゲージメントは上がりにくく、転職されやすいデメリットがあります。例えば、同じような業務を担当する2つの企業があれば、より待遇の良い企業で働くことを選ぶ人は多いでしょう。
人材の流出を防ぐためには、待遇面を充実させたり、職場環境を整備したり、従業員を定着させる工夫を企業ごとに考えることが重要です。
3-3.帰属意識をもちにくい
ジョブ型雇用では決められた業務に専念すればよいことから、企業への帰属意識が生まれにくい点もデメリットです。メンバーシップ型雇用であれば、複数の同期がいたり、働く中で新たなスキルを習得したり、帰属意識が高まる要素がたくさんあります。
しかし、ジョブ型雇用では、企業側からアプローチしなければ、帰属意識を向上させることが難しいと言えます。帰属意識が低いと人材が流出しやすくなることから、自社にできる予防策を考えて実行することがポイントです。
4.ジョブ型雇用の導入方法
ジョブ型雇用を導入する場合は、方向性を誤ると組織内から不満の声が出てくる可能性が高くなります。そこで、ジョブ型雇用を開始するまでに必要な4つの流れについて紹介します。
職務内容を定義する |
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初めに、業務や責任の範囲などの職務内容を定義します。現場で実務にあたっている従業員側の意見も参考にしながら、実際の職務とズレがないようにすることがポイントです。 |
職務記述書を作成する |
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続いて、定義した職務内容を職務記述書にまとめます。職務記述書に記載するのは、職務内容のほかに、その職務の遂行に必要なスキルや経験、人柄などの条件を表す「職務要件」です。作成した職務記述書は、採用活動だけでなく人事評価や人事異動などにおいても活用できます。 |
職務に応じた給料を決める |
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職種や責任範囲などをもとに、給料を決めます。メンバーシップ型雇用では、年齢や勤続年数に応じて給与が決まる傾向にありますが、ジョブ型雇用では、職務が基準になることが特徴です。ジョブ型雇用で定着率を高めるには給料設定が重要な要素となるため、慎重に検討しましょう。 |
評価制度を決める |
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最後に、評価制度を見直します。ジョブ型雇用では職務内容によって給料が決まるので、職種や責任の範囲などに応じて、評価基準を細かく設定することが必要です。 |
このうち、特に重要なのが職務記述書の作成です。具体的な記載は重要ではあるものの、職務をあまりに細かく書くと、該当する人材が市場で見つからない可能性があることに加え、人事評価や人事異動も困難になります。
また、ジョブ型雇用を導入する際には、従業員に丁寧に説明・周知した上で、あらかじめ疑問や不安を解消することが重要です。
まとめ
ジョブ型雇用とは、職務を基準に人材の採用や配置をする人事制度のことです。人を採用してからスキルや経験を踏まえ適した部署に配置する「メンバーシップ型雇用」とは異なり、ジョブ型雇用は職務に適した人材を採用します。
ジョブ型雇用には「ミスマッチを抑えられる」「即戦力が期待できる」などのメリットがある一方、職務記述書に沿って業務が遂行されるため「業務の柔軟性が低くなる」というデメリットがあります。ジョブ型雇用の導入では特に職務記述書の作成が重要であり、人事評価や人事異動も念頭に置いた書き方が必要です。導入する際は従業員への説明や周知も行い、組織内で混乱が起こらないよう理解を求めましょう。
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